駅ホームにおける危険行動検知システム

【研究の全体像】

【研究概要】

鉄道における人身障害事故は、多くの鉄道会社が対策を講じているにもかかわらず発生する。多くの鉄道会社が行なっている対策の例としてホームドアが挙げられる。全国でホームドアを設置する駅は増加しており、令和2年度末時点で943駅となっている。しかし、全てのホームにホームドアを設置することはスペースの都合など不可能な場合もある上、ホームドア設置費用は国土交通省によると1扉400万円とした時、一駅あたり3億円と高額であり、全ての駅に設置することは困難である。また、ホームドアの荷重に耐えられるようにホームの改良も必要なため、完全配備には数十年かかるとされている。その一方で、ホームからの転落事故のうち酔客によるものは前兆行動があることが明らかになっている。このような前兆行動を観測できるセンサネットワークを構築することで、転落事故の予兆を検知できる可能性がある。既存研究では、ホーム端の天井にカメラを設置してホーム上の人物を撮影し、取得した行動軌跡から転落したかどうかを検知するシステムが提案されている。しかし、カメラで撮影した画像を使用しているためプライバシーを侵害する可能性が懸念される。また、防犯カメラの画像を活用した異常行動を検知するシステムも提案されている。このシステムでは、撮影した画像から通常動作を学習し、通常動作か異常動作かを推定している。しかし、このシステムではカメラを用いているためプライバシーが侵害される可能性があることと、屋外での検証が行われていないため、実環境での動作状況が確認できていないことが課題である。

そこで本研究では、対象物の距離・位置・形状を取得可能なレーザーレーダーの1種である三次元LiDARを用いて、ホームの三次元構造を計測・解析することで駅ホーム上に存在する人物の行動を観測し、駅ホーム上から転落する予兆を検知するシステムを研究開発する。提案システムは、センサノードにおいて人物に対応する点群データ抽出し、解析ノードにおいて行動推定を行う分散処理システムの構成を採用している。これにより、それぞれのノード間で通信するデータ量を減少させ、リアルタイムに行動を推定するシステムが実現できる。また、行動推定に既存の防犯カメラを使用せず、三次元空間の構造を計測することが可能な三次元LiDARを用いることで、計測対象となる人の姿勢や位置を三次元的に把握できるため、カメラによる計測より詳細な姿勢や行動の推定が可能となる。さらに、三次元LiDARを使用することで、プライバシーに配慮した姿勢・行動の推定システムとなっている。

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